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噛む力のコントロール

 お口の中を家に喩えると、奥歯は柱、前歯は屋根、歯茎や骨は地盤となります。
地盤が固く、柱がしっかりし、屋根があってこそ家は成り立つのです。お口の中の家を保つためには、この地盤と柱と屋根がしっかり協調し、耐震強度を保っていなければなりません。
お口のなかの家を守るためには、噛む力のコントロールが大切なのです。

歯の平均寿命を見てみると、第一大臼歯、第二大臼歯が50歳前半ということで、一番短くなっています。もしも、歯を失う原因が細菌的要素だけならば、前歯から失われても良いはずなのですが、そうではありません。つまり、噛む力によるダメージでも、歯は失われるのです。

歯がどんどん失われていくと、最終的には上の歯と下の歯の噛み合う歯が交互になくなってしまう「すれちがい咬合」というものになってしまいます。上は奥歯だけ、下は前歯だけ残っているような状況です。
こうなってしまうと歯をうしなうスピードを緩めることは難しくなってしまいます。

噛む力の負担能力が一番高いのは、第一大臼歯といわれる歯です。次に第二大臼歯です。



しかし、噛む力の重心は、筋肉の付着位置により、第二大臼歯のやや後方あたりになっていることが多いようです。負担能力が弱い歯に強い力が加わりやすい環境になっているのです。外見上は掛かっている力は見えませんが、この時点での力のコントロールが大切です。

噛む力は2種類に分かれます。

1. 食事の時にかかる力
食事の時にかかる力は、軟らかい現代食の場合1Kgにも達しません。
ただ、明らかに偏りがあったり、スムーズな動きができないような形態の場合には、顎や筋肉に負担を強いる場合があります。この場合には適切な治療が必要です。


2. 歯軋りや食いしばりの時にかかる力
歯軋りや食いしばりの時にかかる力は、体重の約2倍と言われています。
体重50Kg以上の人で100Kgにもなるのです。この時にダメージを受けやすいのは、一番後ろの奥歯です。
負担が掛からないような治療が必要です。


歯軋りについて

歯軋りは、ほとんどの人がしているという研究結果があります。音がする人だけがたまたま気付いてもらえるだけで、程度の差こそあれ、全ての人がしていると言っても過言ではありません。皆していることですから、それほど恥ずかしがることではないのです。
歯軋りの原因は定かではありませんが、3歳のころまでにしている人は大人になってからもかなりの確率でしているという研究結果もあります。なぜ歯軋りをするのかというと、精神的なストレスコントロールをしているという説が一番有力かもしれません。ですから、歯軋り自体は身体にとって大切な行為であり、止めなくてはならないわけではないのです。
しかし、歯科医療にとっては、歯軋りは大きな敵です。歯を喪失するスピードを早めかねません。
歯にとって有害な力というのは、歯を横に倒すように働く力です。奥歯に対して真っ直ぐに働く力の許容度を100とすると、横に倒れる力には3くらいしか耐えられません。歯軋りは、体重の2倍の力が横向きに働くので、奥歯にとってはたまったものではありません。適切なかみ合わせのコントロールが大切です。

食いしばりについて

食いしばりは、寝ている時にも起きている時にも、ほとんどの人が無意識にしている行為です。歯軋りと同じで体重の2倍の力がかかりますから、知らず知らずのうちに歯にダメージを与えてしまっています。
奥歯の寿命が短い一つの要因です。特に一番後ろの奥歯には強大な力が加わってしまいます。
食いしばりは、歯にとって悪いだけではなく、顎関節や頭の筋肉にも負担をかけてしまいます。食いしばりシンドロームと言って、無意識に強く食いしばっている、常に歯と歯が触れている、歯と歯は触れていないが筋肉が収縮している状態というのは、健全な状態ではなく、顎関節症や緊張型頭痛、肩こり、知覚過敏、奥歯の痛みなどの原因にもなってしまっています。適切な治療が大切です。

歯軋り・食いしばり対策

1. 歯軋り、食いしばりに対する理解
2. ナイトガードによるストレスコントロール
3. 自己暗示療法、認知・行動療法による歯軋り・食いしばりの抑制
4. かみ合わせの調節による歯にかかる力のコントロール
5. 奥歯を守る前歯の構築


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