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2008年08月

被せ物はどれくらい持つのか?

被せ物はどれくらい持つのか?という質問は日本では良くある質問です。
それとは対照的にアメリカでは、どれくらい持つかということよりも、どれくらいの機能を回復できるのかに関心があるそうです。
ですから、被せ物を取れないように恐る恐る使う日本人に比べ、回復した歯で美味しい物を食べて思う存分人生を楽しもうとするのがアメリカ人のようです。



話はそれましたが、でも確かにせっかく治療した歯がすぐに取れたり、ぐらぐらしてしまったりしたら誰でも嫌ですよね。なるべく長く使いたいというのが心情です。

ただ、前述したように、被せ物は歯医者さんが、失ってしまって、回復できない歯を高精度に再建しようとしたものです。どこまで行っても結果に対する後始末なのです。

歯が高精度な被せ物により回復された場合、それを長く持たせられるかどうかは、本当は患者さん自身の努力次第なのです。
どんなに精密に作った被せ物でも、もとの全く治療していない歯よりは弱い存在なのです。
被せ物を入れたら虫歯になりづらくなったわけではないのです。ですから、虫歯にしてしまったのと同じ環境のままでは、より早いペースで悪くなってしまうのは明白です。

たとえば、健康な歯がどれだけ持つのかと聞かれれば、患者さんのケア次第と答えるか、歯の統計的な平均寿命を答えるかしかありません。
どの状態で持ったと言えるのかを定めるのも難しく、被せ物がとれなければ成功なのかといえばそうではなく、被せ物がとれていないが横から虫歯になってしまったもの、被せ物は取れたが歯は新たに虫歯にはなっておらず同じ条件で治療をやり直せるもの、のどちらを持ったということにするのかという設定で被せ物が持つという基準が大幅に変わります。
とても難しい質問なのです。

岡山大学の予防歯科講座の調べによると、50%の被せ物が駄目になる年数は、プラスチックの詰め物、金属の詰め物で5年、金属の被せ物で7年、ブリッジで8年という統計データが得られたそうです。
ただ、これはその歯の状態やお口の中の条件が違うものを合わせたものの平均ですので、すべてがすべてこの年数で駄目になっているというわけではありません。
同じ条件の被せ物が入っても、噛む力が強かったり、細菌のコントロールが悪い人は平均より先に駄目になりますし、噛む力が弱かったり、細菌のコントロールが良好な人は一生持ったりもします。

身長160cmの人と身長180cmの人の平均が170cmだからと言って、両者が170cmの服で大丈夫かと言えばそうではないのです。
同じ車でも、ハードユーザーとソフトユーザーでは、故障の回数も、使用できる年数も大きく変わってくるのと同じです。車は新しいものに買い換えれば良いのですが、歯はそうは行きません。
一生増やせない貯金ならば、なるべくなくならないように節約していくのが、賢いやり方ではないでしょうか。



詰め物・被せ物が悪くなるのは、使用した金属が駄目になるわけではありません。
それを支えている歯のほうに問題が生じてくるのです。なるべく支えている歯が悪くならないような環境にしてあげることが大切です。

つまるところ歯がどれくらい持つかというのは、歯医者サイドの治療の精度と患者さんサイドの環境改善の両者が必要不可欠なのです。


丹野歯科医院tannodentalp  at 23:42コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ! 

詰め物・被せ物の価値

歯以外の治療は、悪いところを治して体が治癒しやすい環境にしてあげるだけで完全治癒することがありますが、歯科に関しては現在のところ歯を完全に再生させる技術がないため、原因を取り除いた後に何かで補わなければなりません。それが歯の詰め物や被せものなのです。

被せ物を被せることによって、失われてしまった歯の物理的な回復、細菌の進入経路の遮断、かみ合わせ機能の改善、見た目の回復がなされます。それを約100分の1mmの精度で歯と適合し、100分の3mmの精度でかみ合わせを調節するといった極めて精密なものです。



そんなに精度をあげなくても、患者さん本人には自覚症状はでないのですが、そうしないと、被せものと歯の間から再度虫歯になったり、歯が揺れてきて抜かなくてはならない状況になってしまいます。

被せ物や詰め物はただの金属の塊ではありません。自分の体の失われてしまった臓器を高精度で回復してくれる人工臓器なのです。
自分の体を構成するパーツですから、詰め物・被せ物の種類を選ぶ時には、メリット・デメリットを良く考えた上で慎重に選択したほうが良いでしょう。

歯は一度悪くしてしまったら完全には回復しませんが、可及的に良い状態に回復しておくことが大切です。

歯は同じ歯の治療を5回繰り返すと抜かなければならない状態になってしまうといわれています。もちろん再治療のほうが最初の治療よりも、条件が悪くなり、治療も複雑化し、早めに悪くなる可能性が高くなります。

現状でのより良い状態に回復し、それを2度と再発しないように予防していくことこそが、お口の健康を長く保ち、一生自分の歯で噛むための最善の策なのです。





丹野歯科医院tannodentalp  at 23:07コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ! 

歯科医療の治療費

歯科の治療費は高いということが言われることがありますが、果たしてそれは 本当なのでしょうか?諸外国と比較してみましょう。

アメリカの専門医の治療費を100とした場合。


アメリカの一般医の治療費:77.2%


日本の自費治療費:70%


スウェーデンの治療費:47.1%


日本の保険治療の治療費:8%


つまり同じ治療をしても日本の保険治療の場合、アメリカ専門医の10分の1以下、スウェーデンの6分の1以下です。アメリカやスウェーデンのような高度な治療をしようとした場合、日本で保険内では厳しいというのが現状です。
日本の保険の総入れ歯は片顎で2万3千円ですが、スイスでは平均27万円だそうです。
スイスの歯科医師に2万3千円で入れ歯を作れるか?という質問をすると「絶対に無理」という答えが返ってきたそうです。



ファミレスで、高級レストランの味を求めること、ビジネスホテルでリッツカールトンのようなサービスを求めることが無理なように、日本の健康保険制度の範囲内のみで、最高の治療を行うのはちょっと無理がありそうです。
(ただ、歯科医師としての使命感で、保険内の治療でもできるだけ良い治療をしようと日本の歯科医師も頑張っております。)

歯医者の私としては、高価な車やバックを所持するよりも、白く輝く歯を持っていた方が、何かとお得なような気がするのですが皆様はどうでしょうか?


丹野歯科医院tannodentalp  at 00:10コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ!